一般社団法人ワンライフプロジェクト

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今から3年半前、家内を亡くしました

今から3年半前、家内を亡くしました。
癌を宣告されてから1年8ヶ月。家族の懸命の看護の甲斐なく、帰るあてのない旅へと旅だってしまいました。
「治るものなら、どんなに辛くても、どんなに苦しくても耐えるから」
と言いながら、周りの人たちに、孫たちに、穏やかな笑顔で愛情を注ぎ、今日という一日を生きよう、生きようとした「たったひとつの命」でした。
平凡でありふれた今日という一日ほど、この上もなく幸せで尊いものはありません。

桜のつぼみが開き始め、辺りが春色に染まり始めた4月のはじめ。
花の大好きだった家内の仏壇の上に、四つに折りたたまれた
孫娘からの小さな手紙が置かれていました。
たどたどしい文字で書かれたその手紙には、
「ばあば、おそとに ちゅうりっぷがさきました。
みーも、もうすぐ一ねんせいです。ぴあのもじょうずになりました。
これからがっこうがはじまります」と書き綴ってありました。

この幼い孫娘の心の中で何を感じ、何を想い、あの時の優しい微笑みの「ばあば」が、今でも生き続けているのだろうかと思わず涙してしまいました。

「たったひとつの命、今日というありふれた一日」が
どんなに尊いものか、そして、何よりも
自分が辛くても、苦しくても、人に笑顔を見せる強さと優しさを
身をもって教えてくれた、たったひとつの命です。

セピア色になった一人の老後も悪くはない、とやっと思い始めた今、孫娘からの小さな、小さな手紙で、心は春色です。

埼玉県川口市
八角 忠(ほすみ・ただし)さん (70歳)